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譲位・践祚・改元

日本史の年表に「譲位・践祚・改元」という記述は頻出しますが、後ろ二つはともかく譲位をリアルタイムで体験できるとは思いませんでした。

平成の御代も残すところあと一日ですので、現時点での雑感を簡単に書き残しておきます。


さて、日付が変わって本日30日は、多くのカレンダーでは退位の日と書かれています。
譲位と退位の違いやら何やらは詳しい方々にお任せするとして、個人的には、今回の一連の出来事が今上の「おことば」から始まったという点が強く心に残りました。

それで私が思い出すのは、8年前の3月16日のことです。

東日本大震災の発生当日、少なくとも夕方の時点では、原発に関してはさほど深刻とは考えられていなかったと記憶しています。
地震発生直後に「稼働中の原子炉が緊急停止した」というニュースがあり、それでどこか安心してしまった部分があったように思います。

当時、たしかワシントンポストだったかの記事を読んだのですが、「ヒラリー国務長官(当時)が、水をはじめ必要な物資を日本に送る用意があると表明」といった内容で、それに対して「水って……おい、ヒラリーは馬鹿か?」「単なる水じゃなくて真水だろ。馬鹿なのはお前だ」といったコメントがあって心が和んだのを覚えています。

しかし、現実の原子炉は外部電源も非常用電源も喪失した状態に陥っていて、日本政府の対応も外部への表明も後手後手に回りました。

地震の被害を伝える国内の報道は見ているととても辛いので、当時の私はよく海外の報道に逃げていたのですが、日が経つほどに文章から切迫感が高まっていくのを感じました。

同盟国のアメリカをはじめ、各国は自国民の安全を守る義務と責任があります。
なのに日本政府の発表も行動も、とても信を置けるものではない。

海外の記事から伝わって来る不信感は、日本という国家の存在を無視して各々の国民のために動くべきだという声がいつ出ても不思議ではない域にまで近づきつつあるように思えました。

それは、国権(大辞林によると「国家が持っている,国内を統治したり外国と交渉したりする権力」のこと)の喪失を意味します。

そんな状況において、16日に今上がおことばを述べられました。

的確な状況把握に裏付けられ、適切な表現によって語られたおことばの内容が素晴らしかったのはもちろんです。
しかしそれ以上に凄いと思ったのは、それが陛下の「私はここにいます」という表明に他ならなかったからです。
敢えて直截的に言えば、あれは国権の存在を高らかに表明して下さったようなものでした。

これを境にして、日本国の統治権を否定しかねない論調は、海外の報道から完全に消えました。

ゆえに私は、当時リアルタイムで報道を追った者として、語り尽くせぬ感謝の念を畏れ多くも抱き続けています。


平成の世は自然災害が多く、経済も停滞して我が国の国際的な地位は相対的に低下しました。
それらは古代中国以来、特に前者は為政者の責任と捉えられてきました。

しかし二十一世紀を迎えた現在、そうした古い考え方は捨て去るべきだと思いますし、むしろそうした厳しい情勢にあっても今上がいて下さったからこそ助かったと、そう言ったほうがよほど適切だと私は思います。


先帝のポツダム宣言受諾の決断しかり、今上の震災時のおことばしかり。
たしかに超法規的な側面はありつつも、私たち日本国民の窮地を救って下さった二代の帝には、謹んで頭を垂れる以外の行動を私は思いつきません。

三十年の長きにわたって御代を統べられて。
今こうして譲位の日を迎えられるまで、日本国憲法の定める天皇としての責務を立派に果たされた陛下に最後に一言。
不敬な表現ではありますが、お疲れさまでしたと書かせて頂いて、この文章を締めくくりたいと思います。


以上、平成の世において私が書き記すことはこれが最後です。
令和が多くの人にとって良い時代となりますように。

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