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橋本治さんのこと。

橋本治さんの死を聞いた昨夜の時点では、私に何か書けることがあるとは思えず。今日も一日の大半は、橋本さんを思い出さぬまま過ごしていました。

でも、先程ふと思い立って昔書いたものを読み返しているうちに気が変わって。そして今、こうして文章を書いています。


リンク先の「双調平家物語」の感想を書いたのが2010年の8月で、それ以前も以降も私は橋本さんの熱心な読者ではありませんでした。

「桃尻娘」シリーズを読んだのは第一作の刊行から20年ほど経ってからですし、人生相談は読んだものの桃尻語訳は今なお未読です。

私にとって橋本さんは、継続的に追う対象ではなくて。でも、時おり書店で著作を発見して、「この人の興味は今はこれに向いているんだな」と頷きながら作品を手に取るような、そんな距離感でした。

その意味では、私は追悼文を書くには相応しくないと言えるでしょう。

しかし、橋本さんの「平家」と正面から向き合ったランキングというものが仮にあるとすれば、僭越ながら私も割と上の方を狙えるのではないかと思います。

おそらく全国を探せば、橋本さんの「平家」を何度も何度も読み返した読者さんもおられるでしょう。一方の私は一度通して読んだきりです。

でも読んでいる時は一発勝負の気持ちで、描かれた時代の空気感や人物の動く様を、時には「そういうことか」と頷きながら、時には「それだと少し違和感が」などと生意気なことを思いながら、橋本さんと一緒に追体験したという感覚があります。その感触は今でもしっかりと残っています。

それはつまり、16ヶ月にわたって月一回の濃密な授業を受けた間柄と言っても過言ではないわけで(でも私が橋本さんを一方的に知っているだけなので、やっぱり過言でしょうね)。

その時間を過ごしたことで私が得た最も大きなものは、橋本さんが自らの裡にある疑問を発見してそれを納得に変えるまでの一連の流れを、身を以て体験したことでした。

私が未知のものと向き合った時、その後の行動パターンの中には橋本さん由来のものが確かに存在しています。それは私がこの世に別れを告げるまで、きっと無くなることはないでしょう。


だから私は、好奇心旺盛な先達に感謝の気持ちを込めて、この文章を亡き橋本治さんのために書きました。

毎月1冊ずつの刊行で全16巻。あの16ヶ月、本当にありがとうございました。

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