レアル・マドリード対アトレティコ・マドリード

ちょっと余裕がないので、まとまりに欠けるかもしれませんが、ざっと試合を振り返ります。


■ジダン監督の采配

ジダンの采配は所々で良く解らない、というのが正直なところ。詰めの甘い部分は色々とあるのですが、それが問題になるより前にしっかりと仕込んだ部分が成果に繋がって結果を出しているという印象です。

大まかに言うと、切り捨てる部分を選ぶのが上手いという点が監督としてのジダンの最大の長所で、逆に状況の変化に対応しきれないという点が最大の短所かなと思います。


この試合でジダンが選んだのは、相手にボールを渡した上でのショート・カウンターでした。まるで相手のお株を奪うかのように、前半のアトレティコのビルドアップを妨害する守備はよく練られたものでしたし、自陣の後方から繋ぐ事に執着しない辺りも監督の意図が選手に浸透していたと思います。

とはいえ、レアルは伝統的にボールを持って攻撃するチームですし、守備のタスクを選手に徹底するのは難しいものです。ジダンの選手時代の実績がそれを可能にしているという分析もありますが、例えばモウリーニョ時代と比べると守備面での拙さはありますし、つまり選手に守備の意識を徹底できているとは自分には思えませんでした。


それが表面化したのは後半になってアトレティコが4-3-3に変更してからでした。この試合のレアルは4-4での守備を基本としていて、たまにロナウドが守備に加わると4-1-4に移行する形。その辺りの判断はカゼミロやクロースに任されている印象でした。しかしアトレティコがサイドに選手を多く置くようになると、カバーの決まり事などがあやふやだったのでそこからチャンスを作られたり、ゴール前で相手選手に前を向かせる場面も増えて来ました。

こうした状況に対して、ボール保持を高める為にイスコを投入したり、右サイドの守備を手助けする為にルカス・バスケスを投入するのは、理由としては理解できるものでした。しかし、それをピッチ上の他の選手が理解していたかというと難しいものがあります。特に前線の選手達としては、前半同様に全体的に押し上げて、カウンターであれポゼッションであれ自分たちの攻撃の時間を増やしたいという気持ちが強かったように思います。


こうした明らかな綻びがありながらも、ジダンのチームは失点を1に抑える事に成功します。この辺りは「ジダンは運命の女神に愛された存在だ」という分析に頷きたくもなりますが、一方で監督としてのジダンのバランス感覚ゆえではないかと思う気持ちもあります。

仮定の話ですが、もしもベニテスやモウリーニョが指揮を執った場合、ジダンに比べて選手に要求する守備面での動きはもっと複雑かつ多大なものになると思います。そして物事は、指示が長大でどんな状況にでも対応できる内容であるほど上手く運ぶかというと、決してそんな事はありません。むしろ、最低限の指示に絞ってそれを完璧に履行させる代わりに、指示以外の事については臨機応変にと現場に任せてしまう方が、良い結果に繋がる事が多々あります。

自分が考えるジダンの長所とはまさにそれで、そしてこれは短所と表裏一体のものでもあります。仮にアトレティコが同点に追いついた勢いのまま攻撃を続けていれば、大人しく敗北を受け入れる以外の選択肢は無かったと思います。



■ジダン監督の采配その2(クラシコ)

ここで、今シーズンのレアルにとって転機となった一戦。先月の敵地でのバルセロナ戦を少し振り返っておきます。


この試合でもレアルの守備は4-4が基本で、ロナウドが戻って来るなら余った一人が相手のボール保持者にプレスを掛けるか、それとも中盤の底で一人余らせるかという仕組みでした。ロナウドは確かに自陣深くまで下がって守備を頑張る場面もありましたが前線に残っている時もあり、守備面での貢献は巷で褒められているほど確実ではなかったように思いました。ベンゼマのブスケツへのマークはさほど厳しいものではなく、バルセロナのビルドアップを妨害できていたかというと微妙でした。

微妙な点は他にもありました。まず4-4の守備が中央に偏っていて、サイドに選手を増やされたらどう対応するのかという不安が残りました。クラシコではメッシもネイマールも中央突破に執着したので大した問題にはなりませんでしたが、この点は先に述べたようにアトレティコに付け入られる隙となりました。

更に、前半はボールを奪った後のビルドアップが整備されておらず、BBCが自陣の深い位置からダッシュをして少人数で攻撃を終わらせるしか方法がありませんでした。こうした幾つもの綻びゆえに、後半にバルセロナが先制した時点で勝負は決したかと思いました。


しかし、長所が場合によっては欠点にもなるように、付け入る隙だと思われた点が状況が変わると利点になることもあります。前半はBBCのスプリント頼みだった攻撃のお陰で、他の中盤の選手は体力を温存することができました。バルセロナ相手に後半の途中でバテてしまう展開はレアルに限らずよく見られる現象ですが、この試合のレアルの選手達は後半の終了間際まで走れる体力が残っていました。

また、前半に相手の攻撃を受け続けたことで、早い時間に相手のボール回しに慣れたのも有利に働きました。後半のマドリードは相手のビルドアップを妨害できる選手配置になっていて、これは事前の準備に前半の経験が加わることで精度の高いものになっていました。おそらくこの時の経験がアトレティコ相手の前半にも活きたのではないかと思います。

同点に追いつく少し前からのレアルの攻撃は素晴らしく、そして内容そのままに逆転で勝利という結果も得ました。アトレティコほど守備面での完成度はなく、バルセロナほどポゼッションからの攻撃の精度が高いわけではなく、しかし短所を晒しつつも長所で相手を押し切れるクラブ。中でも相手のビルドアップを妨害してからのショートカウンターの冴えが抜群の、対戦相手にとって嫌なチームが、この時に完成したのではないかと思いました。



■シメオネ監督の采配

まず采配の話の前に、アトレティコの最大の強みが守備であるのは確かですが、彼らとてスペインのクラブであるだけにポゼッションは普通にできます。つまりボールを持たされてもそれほど苦にせず、レアルやバルセロナ相手であっても自ら攻撃を仕掛ける時間帯を作る事ができるチームです。この事は過去のリーガ・エスパニョーラでの試合を見れば判ることだと思います。

つまり、この試合の前半にアトレティコのビルドアップが上手くできなかったのは、彼らに原因があるのではなくレアルの守り方が上手かったからだという事です。先に述べたように、クラシコの後半にはバルセロナのビルドアップにすら対応していた面々が相手です。前半の光景だけを見てアトレティコはボールを保持しての攻撃が下手だと断じるのは勿体ないことだと明記しておきたいと思います。


さて、そんなわけで先手を取られたアトレティコでしたが、先制した後のレアルが少し引いたことで徐々にボールが運べるようになり、そして後半からシステムを変更することで試合の流れを引き寄せることに成功しました。しかし同点に追いついた後、2トップに戻したことで自ら得た流れを失いました。

残念だったのは、延長上等という姿勢に見えたのに延長に入ってからも積極的に前に出られなかった点でした。前回の決勝で90分で力尽きたトラウマがあったからか、それともピッチ環境が悪く敵味方ともに足を攣る選手が続出したのが誤算だったのか。仮に90分で決着を付けるという意識で同点後も戦っていれば、試合はほぼ確実に彼らのものだったように思います。


シメオネ監督の采配については、去年までで既にスタイルが完成しているだけに、予想外の一手というものはありませんでした。とはいえ、ほぼ同じメンバーで4-4-2から4-5-1から5-4-1まで細かなバージョン違いも備えつつ変化させられるのは、監督がチームを完全に掌握している事と戦術に深い理解がある事の証拠ですし、それ以上を求めるのも難しいように思います。

バイエルンのグアルディオラ監督もですが、できる事を最大限に突き詰めてチームの弱点を徹底的に克服して来た監督が最高の結果には届かず、一方で素人目にも幾つか隙があるように思えるチームが最高の結果を得られるというのは、ある種のアイロニーでもあり、しかし納得できる展開でもありますね。



■おしまい

最高の結果を残したジダン監督ですが、来シーズンはチームがより攻撃を志向することになるのでしょうし、そこでの舵取りは難しいものになると思います。少し前にチェルシーでCL優勝を果たしたディ・マッティオ監督と境遇が似ている気がして不安になりますが、彼ならではのバランス感覚で内容と結果を両立させてくれる事を願っています。

シメオネ監督は退任の可能性もあるとの事ですが、彼の存在なくしてリーガで二強と争う事も、CLで優勝を目指す事も難しいと思うので、何とか気持ちを切り替えて今季と変わらぬ強いチームを来期も見せて欲しいものです。

ユーロは参加国が増えてレベルが落ちそうですし、コパ・アメリカは去年に続いての開催で、サッカーを見るモチベーションが低下気味ですが、来期もまたレベルの高い戦いを見られる事を願いつつ。
今日はこれにて。

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