例の暴走船長の話。

久しぶりに真面目に政治の事でも書こうかと思ったのですが、今夜は餃子を食べた事だしテーマは例の「尖閣諸島沖で衝突事件を引き起こした中国人船長釈放の話」で良いとして、どうもまとめにくいですね。。という事で、まずは箇条書き。

・「那覇地検の判断」と政府の対応について
・日本側が得たものと、その活かし方
・「面子」の問題
・レアアース禁輸について

以上4点をお届けします。



・「那覇地検の判断」と政府の対応について

「地検ごときが!」なんて昨今のフロッピー事件とあいまって検察叩きが更に進んだような意見もちらほら聞きますし、極端なものになると大津事件を引き合いに出す方もおられるようですが、どうなんでしょうね。

個人的には、政府の判断であるのが明らかなのに、責任を地検に投げる首相や官房長官のやり方には違和感を覚えますが。ただ、ここで「政治主導って何だったの?」なんてからかった結果、素人判断で現場が混乱する過去が復活するのも嫌ですし、敢えて指摘しなくてもいいか、という感じでしょうか。

ニュースにならないだけで実は自民党政権よりも致命的な失言が多い気がする民主党政権ですが、今回は一応「変な言質は取られないように」という意識は感じられました。それでもやはり軽率に思える発言や行動はありましたし、そもそも、落としどころの設定がないままに閣内不一致で突っ走った辺りは困ったところですが、小さくとも一応は前進しているのだし今回は不問という事で。って、何だか偉そうな物言いで申し訳ないですが(笑)。


・日本側が得たものと、その活かし方

米国のいわゆる高官筋に当たるような方々の発言は今までにもあったわけですが、尖閣諸島に日米安保第五条が適用される事を国務長官と外務大臣の間で公的に確認した時点で、とりあえず「可」は確定という感じだったかなと。欲を言えば切りがないですが、中国の手持ちの札がだいたい見えた事で、それを生かすも殺すもさほどの差はないような気もします。

後は、今回の騒動についての日本側の見解をきちんと表明する事ですが、どうもこの点については不安がありますね。中国が北朝鮮みたいな事を言おうが、船長が世迷言をほざこうが、その辺りは大人の貫禄でスルーするとして。我が国の取った行動についてはきちんと説明しておくべきで、この辺りを怠っているから付け込まれるという事をより真剣に考えて欲しいものです。そこで更に相手の言い分を逆手にとっておちょくる一節を加えられたら楽しいのですが、今の段階でそこまでは望みませんよという事で。

で、この説明には海外向けと国内向けの二種類があると思うのですが、よく指摘されるのは日本は海外向けに情報を発信するのが下手で、それによって損をしているという事ですね。今回のように現場レベルでは明らかな勝利であっても、その後のプロパガンダで巻き返されてしまう事も多いので、気を付けて欲しいものです。

一方の国内向けですが、何も言っても「日本の面子が!」なんて繰り返す方々は放っておくとして。最近思うのですが、「話せば解る」方々への説明が貧弱な事が、日本の政治の現状に繋がっている気がするのです。故に、国民のナショナリズムを無意味に煽るだけの説明に変わって、論としてしっかりしてかつ読みやすい言説が主流になって欲しいものだなぁと。奇麗事と受け取られちゃうかもしれませんが、その方向に向けて地道に努力を重ねる事が必要なのではないかなぁと思うのでありました。


・「面子」の問題

で、面子についてですが。結局のところ、今回の事件をどう評価するか?と考えた時に、評価を下す人が「面子」をどこまで重視するか?という点が一番の争点になるような気がします。ちなみに以下で言う「面子」とは現実的な利点に繋がりにくい空威張りの事で、つまり「実を捨てて名を取る」域にまで達している場合について考えています。次回以降の交渉が不利にならないという意味での「面子を保つ」事は重要だと思っておりますので、念のため。

個人的には、大義名分論や「面子」重視にナショナリズムが結び付いた末に今回の事を「弱腰外交」と批難する事には一抹の不安を覚えます。現段階ではそこまで心配をしなくても良いとは思いますし、今回の政府の対応を批難する方々を責める気もあまりないのですが、将来的にはとても気になる傾向です。日露戦争後の日比谷焼き討ち事件や、先の大戦前の幣原外交が軍部に「軟弱」と批難された事を連想しますが、特に後者について、改善に繋がる批難ではなくより稚拙な外交しか生み出せなかった批難だった事を思い出して欲しい気がします。

ついでに余計なお世話ですが、「面子」に囚われ過ぎるのは中国の伝統的な傾向でもあるわけで。北宋辺りの歴史を振り返ったら役に立つんじゃないかなぁとか思ったりもしますが、何だかそんな余裕すらなさそうなのが怖いところですね。


・レアアース禁輸について

ちょいと気分を変えて各論っぽいお話も。で、レアアースの禁輸については中国以外の国から調達するリスク分散や、レアアースを使わない方法を開発する事も我が国では進行中らしく、他の先進国の方が肝を冷やしたのでは?という話も聞きましたが。ただ、「日本にはあんまり効かないもんね~!」とか大々的に言ってしまうと円高要因にもなるわけで、難しいところです。水面下で要らぬ技術防衛戦を招く事にもなってしまいますし。。

ここで先ほど書いた海外向けの説明という事を補足すると、当事国に向けた内々の説明という要素もあります。これは大々的に発表するものとは違うので、「分かってると思うけど、レアアース禁輸で日本が受けるダメージよりも、レアアースを使った部品が入ってこない事で中国国内の製造業が冷え込んじゃう方が痛いんじゃない?」なんて低級の脅しもできるわけで。つまり、先ほどはやや理想論的な話でしたが、現実的には、国内向け・海外向け・当事国向けで説明が一致しなくても何ら問題はないという事です。三方を納得させる大統一理論があれば確かに理想ですが、個々を満足させる形での説明で充分ですので、それぞれに対して丁寧に説明する姿勢を重視して欲しいものです。

で、国内向け・海外向けはオープンな話なので問題はないとして。当事国向けの事後処理という点で、そのやり取りをする水面下のパイプについても少し気になるところです。公明党が今回の船長釈放に対して評価をしていましたが、そのルートも含めてどの程度が生きているのか見えにくい辺りが、将来的にどうなのかなぁ?と。これは対米ルートについても同様で、よく陰謀論の方々がアメリカ留学で手先にされて云々という話をされていますが、仮にその指摘が妥当だとしても、質以前に量の面でパイプが保たれているのかが最近少し気になるところで。。ま、これは一般人が心配しても仕方がないので、センセイがたの外遊の成果を期待しましょう。



・まとめ

事件後の処理の仕方でまた評価が大きく変わってくるだけに、現時点でどうこうまとめられるものでもないですが。。

いちおう我が国としては、上で書いたように日米安保の確認と尖閣諸島沖が日本の領海だという意思表明ができたのがプラス点。マイナス点は検察不信の助長とナショナリズム的な不満感が国内で広がった事。ただ、ナショナリズムについては中国の方が深刻で、それに引き摺られて得たものは名ばかりの面子。これで外国資本は経済面での中国リスクを一段高く見積もる事になるでしょうし、中国政府の強硬姿勢や末端の暴走なども増える可能性があるだけに、こちらとしても備えは必要でしょうね。

冷静に考えると、南シナ海に続いて東シナ海でも存在感を発揮して中国の膨張を封じ込めつつ、日本に対しても安保の価値を再確認させた国が一番得というか。文字通りの漁夫の利を得られた気がする辺り、気に喰わない感じもありますが。。現在の東アジアの枠組みでは無難なところかな、という感じですね。

以上、稚拙な意見でありますが、何となく書き残しておくべき気がしたので深夜にせこせこ書いてみました。時間を経て読み直した時に、不安が杞憂で済んでいる事を願いつつ。今日はこれにて。


*ちょいと補足的にネタ記事を書きました。→「前回の補足:敢えて麻雀に喩えると?


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