オランダ対スペイン

続いてワールドカップ決勝戦のお話。


こちらもまずは一言で言うと、現実的に戦ったオランダに対して、スペインが何とか自力地力で上回った試合、という感じでしょうか。そして密かに、普段サッカーを見ない人たちがこの試合を見てどう思うのかが気になるところです。

「オランダのプレイが汚い」「スペインはシュートを打たず倒れすぎ」なんて文句を言われても仕方のない試合展開でしたが、どちらも初優勝がかかった試合だっただけに、主審も大変だったでしょうね。



■前半

オランダもスペインも、共に相手をきちんと研究して対策を練って来た感じは受けましたが、それについてはオランダの徹底振りが印象的でした。相手にボールを持たせる意図が明確のオランダに対して、じゃあ望むところだよと攻撃を仕掛けるスペイン。

対するオランダは、スペインの中盤を自由にさせないという目標を掲げて、献身的にそれを実行していました。特に、相手の最終ラインにボールがある場面で、できるだけプジョルにボールを持たせるような守備が印象的でした。彼の長所は闘志を剥き出しにして相手の攻撃を防ぐ事であって、足元の技術はあまり上手くないという点を狙ったもの。ついでに、キーパーのカシージャスもシュートを止める能力は際立っているもののキックの精度などは不安な選手なので、彼らにボールを持たせる事で相手の攻撃の組み立てを阻害する事に成功していました。

とはいえ、スペインの選手たちの個人能力は非常に高いので、中盤のブスケツや時にはシャビが最終ライン近くにまで顔を出す事で攻撃の組み立てを図ります。両サイドのイニエスタやペドロが中央に入ってくる事でそれを手助けする形。ただこれも、オランダからすれば相手が勝手にゴールから遠ざかってくれているわけで。何だかサイドを両SBに丸投げしている古き善きブラジルのような選手配置になっていましたが、組み立てが阻害されているのでSBもなかなか上がれず。時折ボールを運べてもオランダのゴール前には敵が多くて味方がおらず、チームとして苦戦するスペイン。でも個人能力でチャンスを作ってしまう辺りが凄いなと。

オランダはボールを高い位置で奪ってからの速攻狙い。速攻がダメでも焦って無理攻めをする事はなく、じっくりボールを落ち着けながら、守備を見越した選手配置で時計の針を進めます。仮にボールを奪われても守備にすぐに入れるので、攻撃が連続する場面もちらほらありました。個人頼みの攻撃が結果を出すのか、それともカウンターでのワンチャンスを活かすのか?確率的にはオランダが優位かな、という印象の前半でした。



■後半~延長

後半に入ってスペインが積極的に前に出ます。「攻撃が失敗しても高い位置でボールを奪って連続攻撃を行うのは、自分たちの得意技でもあるんだよ?」なんて主張が聞こえて来そうな展開。ただやっぱりゴール前に人が足りない状況は変わらず、選手交替なりの変化が欲しいスペイン。そしてオランダは前半に続いて任務を黙々と続行中。。

そこでスペインは後半15分、ペドロに替えてヘスース・ナバスを投入。サイドで前に突破する動きを期待しての采配だと思うのですが、中央の味方は慢性的に人数不足で、逆に相手の人数が揃っている状況では、突破して中央にボールを届けてもさほどの効果は得られず。。逆にオランダはその10分後にカイトに替えてエリアを投入して、「もしも右SBが攻撃に参加すると、その後が怖いよ~?」ってな脅迫文をちらつかせます。こういうやり取りは好きなのですが、哀しいのは、エリアがスペイン陣内に深く切れ込むようなシーンが殆ど見られなかった事でしょうか。。

後半42分、延長も見えてきた状況でスペインはシャビ・アロンソに替えてセスクを投入。中盤底から相手のゴール前への縦方向の動きを期待しての采配でしょう。さすがに組み立てに困るような状況は少なくなって来たものの、場合によっては自陣からボールを運び、ゴール前を固めるオランダ守備陣をなかなか切り崩せない中盤を助けつつ、先発陣に足りないシュートの意識を見せてくれ、ってな贅沢な欲求に応えようとするセスク。

延長に入って前半10分と15分にオランダは中盤と左SBの梃入れしたものの、大まかな方針は変わらず。戦略としては120分を通して完璧に遂行できていたと思います。何度かあった決定機を決めていれば、試合はオランダのものになっていた事でしょう。しかし、相手キーパーのカシージャスが立ちはだかります。。

延長後半の頭から、スペインはビジャに替えてトーレス。「バランスは崩さないけど、PK戦になる前に決着をつけて来い」という声が聞こえて来そうな采配。そしてイニエスタが、オランダのハイティンハを退場させ、決勝点を決め、ユニフォームを脱いで昨夏に突然死したハルケへのメッセージ(英語に訳すと"always with us"だったそうで)を披露する一人舞台。その辺りの経緯は詳しく書くまでもないでしょうという事で、その後のオランダの猛攻も実らず、試合が終わりました。



■まとめ

チームとして、組織として、上回っていたのはオランダだったと思うのですが、それが結果に繋がらない辺りが勝負の難しさであり面白さでもあるのでしょう。


この試合ではキーパーのカシージャスが目立ちましたが、所属のレアル・マドリードでも彼は、チームが攻守分断に陥りやすいために、何度も相手のカウンターに曝されながらもチームを救うという活躍をしています。

また、この試合ではミスが目立ちましたが、センターバックのプジョルも所属のバルセロナでは、チームが攻撃に偏重して前がかりになった場面で相手のカウンターを食い止める姿を何度も披露しています。


ここで思うのは組織としての完成度と結果の関係で、上記のようにチームとして欠陥がある状況であればこそ、カシージャスもプジョルもより強い気持ちで相手の決定機に立ち向かっているとも考えられるわけで。

では組織の完成度を追及する事には意味がないかというと、そのような態度で試合に臨んだチームは往々にして、組織の弱点を突かれて実に論理的な敗戦を喫する事になるわけで。


個人と組織、或いは組織の完成度と強度(脆さ)といった毛色の異なる要素を、勝利の為にどう組み合わせるべきか?という問題を改めて考えさせられた点でも、なかなか楽しい一戦だったな。という結論で締めておきます。



以上、今日はこれにて。





■ちょっと追記(7/15未明)。

個人的に今回のワールドカップで残念だったのは、「試合の質としてクラブ>代表という関係になるのは仕方がないとして、それでも、国を背負っての真剣勝負だからこそ、欧州チャンピオンズリーグとはまた違った魅力が感じられるのではないか」という淡い期待が叶わなかった事でした。

品のよろしくない喩えで申し訳ないのですが、不甲斐ない試合内容で南アフリカを去った代表選手たちからは、倦怠期の夫婦関係のような雰囲気が感じられました。つまり、

「お金を貰っているのは本職の仕事(クラブでの試合)でやりがいもあるし、家庭(代表での試合)も疎かにしようと思っていたわけではなく、むしろ自分のやれる範囲で頑張ったつもりだけど。こんな結果になってしまったんだし、仕事に頭を切り替えて頑張っていくしかないじゃないか。」

・・・といった類の思考の流れが、試合の結果が出る以前から無意識下で存在していたようにも思えました。


某所で仲良くして頂いている川の果てさんが今大会の雑感を書いておられて、私の上記の文章から「そして密かに、普段サッカーを見ない人たちがこの試合を見てどう思うのかが気になるところです」を取り上げて賛同を頂きました。それを更に進めて、「この決勝をサッカーワールドカップの決勝だということで初めて見た人は、二度とサッカーを見ないんじゃないか」と書いておられたのは、まさに私が内心危惧していた事です。

問題は、日頃からサッカーを見ていない人があの試合をぱっと見て、「楽しい」と感じる内容とは思えなかった事。そしてそれが、両チームの実力不足に原因があるのではないかと思える点が、個人的に気になるところです。

要するに、試合前に期待された攻撃的なサッカーという点で両チーム共に物足りなかった事。そして、例えば守備的で楽しくないサッカーであっても、その完成度がある域を越えれば、知識も先入観もなく見ている人にさえ「凄い」と思わせる事はできると思うのです。しかし、そうではなかった事。この辺りをどう考えるべきなのか?という問題提起です。


確かに優勝したスペインは素晴らしかったと思いますが、一方で、大会前から抱いていた「メッシとアフリカ人選手のいないバルセロナ」という印象は変わりませんでした。そしてそれを選手たち自身も自覚していたからこそ、決勝だから慎重にという理由を隠れ蓑にしつつ、バランスを崩して攻勢をかける事をしなかったのではないかと思えるのです。

個人的な印象としては、スペインは2年前のEURO2008で優勝したチームよりも劣っていた気がしますし、ブラジルも2007年のコパ南米選手権で優勝したチームに完成度で及ばない。アルゼンチンは2007年のチームはもちろん、2006年のワールドカップに出場したチームに比べて劣る。オランダは2006年(ベスト16でのポルトガル戦)に続いて退場者が出る不穏な試合で大会を去る事になりました。今大会で期待通りの活躍を見せた有名選手は少なく、将来が楽しみな選手も例年に比べると少なめでした。こうした「結果」を、選手たちが今どのように受け止めているのか??

今後のクラブでのプレイは勿論、代表での内容も含めて、こうした意見を吹き飛ばしてくれるような、観戦している人に選手の強い意志が伝わってくるような姿を見たいものですね。というところで、イマイチまとまらない上に結局また長くなってしまいましたが、これで終りにします。


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テーマ : FIFAワールドカップ - ジャンル : スポーツ

コメント

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色白男子ばんざい

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コメントありがとう!
ホントに、いつ見ても白いやね~。
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