文章の品

今日は、以前にネタにも使った立花隆「巨悪v.s.言論」(文春文庫)に絡んで、もう一つ気になった事について書き残しておきます。


個人的には、いくつか著書を読んだ事はあるものの、今まではどうにも好きになれない作家さんでした。といって別に今回好きになったわけではないのですが(苦笑)、こちらの受け取り方を意識すれば、色々と有益だなぁと見直した部分があったというか。消化の仕方というか利用の仕方というか、それ次第だなぁと思ったのでありました。


好きになれなかったのは、一言で言えば「品の無さ」という事になるのですが。論を自分に有利なように誘導するのは構いませんし、相手(特に、田中角栄元総理)を貶すのも駄目と言うつもりはないですが、限度があるというか。前者について言えば露骨過ぎる気がしますし、後者については徹底し過ぎて興醒めに思えます。総理という重責を担った方への最低限の敬意は払われるべきで、それを軽視した態度は今のマスコミにも悪い影響を及ぼしているのではないかと。

また、そうした態度は著者の人間性への疑問を生み、ひいては論の妥当性への信頼感が揺らぐ結果になるというか。これについては、印象論ではなくてきちんと文章から論理展開を汲み取ってくれと言われるかもしれませんが、どんな文章にも「行間」は存在するわけで。優れた文章は何と言ってもそこが豊饒だと思うのですが、そうした記述の傍に潜むニュアンスを軽視すると、結局はしっぺ返しを喰らうのではないかと思うのであります。いくら外見ではなく中身を見てくれと言ったところで、容姿が伝えるイメージの強さがなくなるわけでもないのと同様に、文章の品についても気を付けたいものだと。


ただ、それでは品の良い文章を目指すべきかというと、この著者のようにマスコミ関係の方で、特に時事問題を論じたり伝えたりする立場にある方々の場合、難しい部分があるのも事実です。それは、報道には一定の割合で下品な部分が必要だからで、大なり小なり人に備わっている「覗き見趣味」とでもいうような傾向がある以上は、仕方のない部分です。だから、下品でマスコミを責めるのはお門違いで、程度の問題として考えるべきなのではないかと思うのです。そればかりになっても困るし、かといって全くないのも困る、という感じで。


そういえば、どの場面だったか(あるいは、別の作品だったかもしれませんが)、作中で座談会があって、立花氏以外にも参加者の名前が明記されている座談会だったと思うのですが、ちょっと気になる場面がありました。立花氏は例によって「田中」と呼び捨てにしてあからさまに貶す態度を明確にしていたのですが、他の参加者はほんのわずかの例外を除いて「田中元首相」「元首相」と、決して呼び捨てにはしていませんでした。立花氏以外は匿名の座談会などでは他の方々も気軽に呼び捨てていただけに、そこに不気味なものを覚えました。

ちょっと穿った見方になりますが、そこには何かしら立花氏に対する底意地の悪さというか、参加者の方々のほんの微かな悪意のようなものが感じられたのであります。まぁ考えすぎというか、普通に体裁を整えただけであったり、自分が上で書いたような総理経験者に対する最低限の敬意という事なのでしょうけれど、なかなか難しいものだなぁという印象も少し残りました。


で、更にエントリーを設けるまでもないと思うのでついでに書きますが、有益だと印象に残った事。著者が角栄元総理の勉強の仕方について、「各論を学んで修めたつもりになっているが、総論を疎かにしているから誤った解釈になってしまう」といった方向から貶しておられました。これは立花氏についても、例えば法律分野とか医学分野などで我が身に返って来そうな・・・なんて少し意地悪な事を思ったのでありますが。「基本を分かっていないと思われて軽蔑されるといけないから、総論を教えて貰うのは断る」のではなく、むしろ定期的に総論というか基本については学び直すべきだなぁ、なんて思ったのでした。

実際、我が身を振り返ってみても各論ばかりで。色々と勉強をする意図はあるものの、どうにも効果を実感できないというのは、総論を軽視する辺りにある気もして来たので、各論つまみ食いではなく系統的に総論をきっちり修める事を意識しようと考えている今日この頃であります。ただ、総論って分野によってはとても退屈で、かなりの根気が必要だったりするのが辛いところですが。。。


勉強については他にも「経験からの抽出ばかりで、本で学んだ事を抽象して具体化する事がない」といった指摘をされていましたが、これは微妙なところというか。経験則ばかりでも困りものですが、後者の問題点は机上の空論になりがちな事で。何というか、評論家くずれの現実感に乏しい(実際にはあまり役に立たない)方だけど、知識人層からは受けがいい、みたいな人が出来上がるだけという予感もしますので、経験についても軽視せず励みたいものであります。



以上、あんまりまとまっていませんが、そんな感じで。
読んで頂いてありがとうございました。
今日はこれにて。


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tag : 文章の品 最低限の敬意 総論を軽視 経験則

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