生物と無生物のあいだ

福岡伸一氏の「生物と無生物のあいだ」(講談社現代新書)を、遅ればせながら読みました。


本書がとても評判が良いという事は知っていたので、実は随分前に購入してはいたのですが。書き出しの辺りを読んでいて、少し「読ませる」事を意識しすぎでは?なんて思ってしまって、今まで放り出しておいたのが残念です。


本書は著者の体験談を交えながら、時に歴史を遡って有名な科学者たちの業績やエピソードに迫り、概ね公平な立場で、現代的な評価に立った描写をされています。こうした著者の立脚点というか姿勢に好感が持てました。

それから、オズワルド・エイブリー(1930年代)、ワトソン&クリック(1950年代)、著者の研究員時代(1980年代)と時代を転々としながらも、いずれも今それが起こっているかのような臨場性を感じさせる点も評価したいところ。


ただ、難癖を付けるわけではないですが、文章としては懲りすぎて空回り気味という印象は最後まで拭えませんでした。構成についても疑問で、特に各章のタイトルの付け方などは、内容の焦点をぼかすのに一役買っている感があります。この辺りは、新書という一般向けの入門書的な役割を求められる作品としてはマイナスかと。

内容については、意地悪な言い方をすれば、先に述べた「概ね公平」という事はイコール評価がほぼ定まっている有名な話に終始している、とも取れるわけで。故に、この分野で大学の専門課程以上に進まれている方には、正直物足りない印象を持たれるかもしれません。新書の内容が年々低下している事は著者に責任はないのでしょうけれど、それだからこそ余計に、高校生にも読めて専門の方が読んでも内容のある作品を志して欲しいものであります。


サイエンス・ライターという職種にはとても期待をしているので、そんな応援の意味も込めて、少し辛口に書きました。読者のバックグラウンドによって評価が割れそうな作品ですが、中高生が凝った文章の辺りは流し読みするぐらいの感覚で読むのならば間違いなくお奨めですし、社会人になってこの分野に興味を覚えた方にもお奨めできるかと。

個人的には、欠けている知識を本書を切っ掛けに体系的に埋めて行こうと思えた点で、有意義な一冊でありました。


以上、今日はこれにて。
読んで頂いてありがとうございました。


関連記事

テーマ : 読んだ本。 - ジャンル : 本・雑誌

コメント
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する