司馬作品への個人的不満点その2+1

では気を取り直して、前回に続いて、司馬作品への不満点その2について。


それは一言で言うと、人間が多面性を持つ事を無視して、一つの面からのみ捉えようとする事です。

特に、戦乱期や時代の転換期を生きて名を残した人々の場合、時代のせいもあって哀しい出来事を体験する事も多かったでしょうし、故に、一筋縄ではいかない互いに矛盾する性格を併せ持つ可能性も低くはないだろうと。

時折、作者が登場人物の性格を掴みきれていない場面などで、ちょっと別の面からの要素も加味したら簡単に理解できそうなのにな、と思う時があります。


ただ、誤解されたくないのは、だから司馬作品はダメだ、と言いたいわけではないという事で。

むしろ、歴史上の人物をそれぞれの一面から捉えて、それだけを追求する事で難しい要素を省いて、読みやすく親しみやすい氏の作品の特徴を生んだとも言えるわけで。氏を大衆的・国民的作家に至らせた所以もそこにあるのではないかと。

それに、一面に絞る反面、その一面については深く作者が追求したからこそ、読み出したら引き込まれてしまう魅力があるのだと思うのであります。


そういえば、先日の不満点その1とも関係する事ですが、特定の場面での作者の状況分析は信頼性が低いですね。これは多面的な分析をしていない事、感情的・発作的な結論ありきの分析が多い事が原因だと思うのですが、要は向いていないのでしょう。

人間が一面からしか語られていない事に加え、こうした傾向を考えると、司馬作品が新入社員への推薦図書に挙がっているのを見るたびに違和感を覚えます。まともに受け取ったら思い込みの激しい困ったヒトビトを生み出すだけなので、個人的には社員教育などに使うよりも、素直に娯楽として楽しんで頂きたいと思うのでありますが・・・。

そうした瑕疵はありつつも、人物の分析と言う点では、上で書いたように一面に絞った事が功を奏して興味深いものに仕上がっているので、(現実に活かせるかはともかく)小説全体としては楽しめる作品になっているのでしょう。


タイトルの割には擁護も多く、褒めているのか貶しているのか良く分からない記事になりましたが、好悪が相半ばするのが司馬作品に対する自分の正直な認識でありますので、今日はこんなところで。

以上、読んで頂いてありがとうございました。


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