ドルトムント対バイエルン

我ながら何年もよく書いているものだと思いますが、毎年好例のUEFAチャンピオンズ・リーグ決勝:今年はドルトムント対バイエルンの一戦について、眠い目を擦りながらテレビで観戦した雑感を以下に書き残しておきます。


■総評

ドイツ勢同士という以上にチームの戦術が似た者同士の決戦になりましたが、自力で勝るバイエルンが押し切った一戦だったな、という印象です。ドルトムントは後半に劣勢になった時間帯に、それを改善できる交替策を有していなかったのが残念だったなと思いました。たとえ60分でもゲッツェが使えたなら、ロイスを左に出す形や、ベンダーをアンカーにしてロイスとゲッツェを左右に配する4-1-4-1にもできたのに…と。という事で、まずはドルトムントの守備から振り返ってみます。


■ドルトムントの守備

試合前には4-2-3-1と紹介されていましたが、この日のドルトムントは攻撃時も守備時も、実質的には4-4-2でした。そしてバイエルンにボールを持たせる形でゲームに入ります。ロイスがトップ下ではなくレヴァンドフスキと横並びの位置に居て、守備時にはそれぞれ対面のセンターバックに圧力をかけ、ボールをサイドに追いやりそこで人数をかけて奪う意図が明確で、実際にも上手く機能していました。

そこからボールを自陣まで運ばれた場合は4-4で守り、ボールを奪い返すと短いパスを繋いで速攻、あるいは高い位置に残っていたロイスやレヴァンドフスキにロングボールを蹴る場面も多く見られました。レヴァンドフスキはともかく、ロイスがボールを競り合っても?と疑問に思うところですが、サイドのスペースに蹴ってロイスや両サイドハーフが足下に収められる展開を期待していたのだと思います。それも上手く機能していました。

このようにドルトムントが二人を前線に残しそこに中盤の面々が飛び出して来る攻撃が機能しているため、センターハーフは勿論バイエルンが誇る両サイドのロッベンとリベリも守備に重点を置かざるを得ず、その結果としてドルトムントは4-4でも充分に守り切れるという好循環で、4-4-2を奇麗に機能させて試合序盤の主導権を握る事に成功したドルトムントでした。


■バイエルンの対策と守備

ボール運びが上手く行かないバイエルンは、シュバインシュタイガーが低い位置に下がって組み立てを手伝います。センターバック2人がサイドに開いてその間に彼が下りる形を試みると、ドルトムントFW陣は縦へのパスコースを潰しつつも、彼に必要以上に近寄る事はありませんでした。それよりもサイドにボールを誘導して以下同上の形を狙っていたのだと思います。シュバインシュタイガーがサイドバックの位置に下りた時には、中央へのパスコースを切りつつ彼かその前のサイドバックでボールを奪うべく襲いかかっていました。ちなみに、バイエルンがキーパーまでボールを戻した場合は完全に放置していました。

こうした手詰まりの状況に陥ったバイエルンからすれば、一発勝負の決勝でもあり安全面からしても、マンジュキッチにロングボールを当てる形が悪くはない選択に思えます。そこから攻められれば良し、たとえボールをキープできなくとも、相手にボールを持たせる展開でドルトムントと同じ事をやり返せば良いではないかと。しかし、守備が機能しているドルトムントは前線から最終ラインまでの距離がコンパクトで、競り合いのこぼれ球の多くを回収できていました。そして前述の三つの選択:短いパスか、ロングボールをレヴァンドフスキに競らせるか、スペースでロイスに受けさせるか、それらを使い分けながらバイエルンのプレスを回避するので、悪い流れを断ち切れないバイエルンでした。

なお、ドルトムントと違ってバイエルンはマンジュキッチが相手キーパーにまで圧力をかけに行っていました。これはドルトムントが短いパスを繋いでリズムに乗る展開を嫌った故だと思うのですが、ロングボールなら自分たちのセンターバックが勝つだろうと見越して誘いをかけていたのだと思います。実際にこの試合ではレヴァンドフスキがロングボールをキープできる展開はあまりなく、狙いとしては間違っていなかったと思います。ただロイスを2トップの一角としてスペースでボールを受けさせる形をあまり想定しておらず、その第三の選択肢に対処できなかったのが前半の苦戦の原因に思えました。


■後半のバイエルン

後半に入ると、バイエルンが幾つか対策を出して来ました。まずは一手目として、ロングボールの的であるマンジュキッチをサイドに流れさせます。サイドバックで180以上とは我が代表を思うと羨ましい限りですが(苦笑)、190越えのセンターバックを相手にするよりはマシだろうという事で、前半よりボールが収まりやすくなったバイエルン。

この変化がドルトムントに与える影響は、1つはサイドバックが上がりにくくなる事。2つ目にその結果としてサイドバックとサイドハーフの距離が開き、スペースが生じやすい事。3つ目にサイドをカバーするためにセンターバックが釣り出される事。その結果として4つ目に中央が手薄になりやすい事。これらの傾向は、後半の開始時点ではまだ些細なものでしたが、最終的には失点に繋がる程の影響力を持つに至ったのでした。しかしその前に、バイエルンの二手目を見てみましょう。

バイエルンの二手目は守備面での変化ですが、特に相手のロングボールに対してセンターバックの二人が積極的に競りに出ていたのが大きかったかなと思いました。ダンテもボアテングも、後半はサイドまでハイボールを競りに行く場面が増えていたように思います。レヴァンドフスキだけでなくロイスへのロングボールにも競りに向かう事で彼を試合から消し、ドルトムントのボール運びを徐々に封じ込めて行くバイエルン。

そして、一手目の結果生じたサイドのスペースの恩恵を受けるのは誰あろうロッベンとリベリなのでありまして、二手目の結果として守備が改善して徐々に高い位置でプレイできるようになった彼らは試合に影響力を及ぼし始めます。そんなバイエルンの三手目は、ドルトムント守備陣の裏への動き。サイドバックの裏はもちろん、手薄になった中央を崩す形も出始めて、ドルトムントは苦しい形になります。

後半の途中からは完全に自陣に押し込まれ、開き直ってロイスを中盤に組み込む手は思い付くもののボールを奪った後のキープの手段が失われている状態では前線にロイスが居て欲しいという悪循環で、改善策が見出せないドルトムント。相手の攻撃に耐えながら個人技の炸裂を待つしかないという状況だったと思います。しかし、ロスタイム間際に中央から崩されて失点してしまい、彼らの挑戦は終わりを迎えました。


■まとめ

両チームともに攻守の切り替えに優れ、チームとして前線から圧力をかけてのカウンターもできればボールを保持して攻めを構築する事もでき、選手個々はテクニックにも体格にも優れ、そうしたバランスの良いチーム構成になっているのが印象的でした。他のビッグクラブと比べると、バルセロナは以前よりテクニックに偏りフィジカルで劣り、マドリーは個人に偏重し過ぎていて、イングランド勢は技術で及ばず、この辺りのバランスを考えると面白いものだなぁと思います。ただ、バランスはとかく崩れ易いものなので、これをもってドイツ勢の優勢が続くとは言い切れないのがまた面白いところです。

バランスと言えば文中には書きませんでしたが、ドルトムントがセットプレイの守備を整備し切れていなかったのも興味深いところで、それとボールを必要以上に奪いに行ってしまう傾向とは、チームとしてのボール奪取戦術が上手く行っているが故に出るものなのかなぁ…などと考えていました。奪うよりもコースを切るなどして防ぐ事が優先されるような場面で、つい奪いに行ってしまう事の難しさというか。。バランスよく何でも出来るチームに仕上げるのは難しいものですし、特にチームとしての強みが時に敗因へと繋がる事を目の当たりにすると、色んな事を考えさせられますね。


以上、長々と書きましたが今日はこれにて。

テーマ : UEFAチャンピオンズリーグ - ジャンル : スポーツ